顔認証入門 #1 顔認証とは

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 顔認証という言葉、SNSやニュースでもよく聞くようになりました。スマホのログイン、facebookの自動タグ付け、空港での入出国審査、チケット・年パスの本人確認など、皆さんも目にしたことや利用したことがあるかと思います。

 一方で、顔認証という言葉の誤用も増えてきました。Twitter等で『顔認証』と検索してみてください。デジカメのオートフォーカス機能、プリクラ・セルフィーの美顔加工を顔認証と呼んでいる誤用が散見されます。

 また、同じ技術のことを意味する言葉として、顔認識と呼んだりもしていますね。顔認証と顔認識、何が違うのかを知らない人が大半なのではないでしょうか。

生体認証

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指紋認証は最も早く実用化された生体認証です

 人間は、人それぞれ違った顔、違った声、違った癖を持っています。これを個人差*1といいます。人間はその個人差をもとにして、その人その人が誰なのかという判断をしています。人間の個人差を手がかりにして個人認証を行う方式を生体認証*2と呼びます。

 ある人物が誰なのか判別する手段が個人認証ですが、生体認証のほかにも手段はあります。『その人しか持っていない物』を利用した方法を物理認証と呼びます。印鑑証明や運転免許証、社員証が物理認証の例です。また、『その人しか知らない情報』を利用した方法を知識認証と呼びます。パスワードや暗証番号が知識認証の例です。

 物理認証や知識認証と比較して、生体認証の特徴として忘れない、紛失しないというメリットがあります。一方で、計測機器が必要、認証失敗する場合があるのがデメリットといえます。

顔認証

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セルフィーで顔認証されなかった、という誤用が多い印象です

 生体認証に利用される人間の身体的特徴として、指紋・虹彩・指静脈などが挙げられます。また、人間の行動的特徴である音声・筆跡・歩容(歩き方)なども生体認証に利用されます。顔認証は、人間の身体的特徴として顔を利用する生体認証です。他の生体認証と比較して顔認証にはどんな特徴があるのか、に関しては別の回に解説します。

 ちなみに、顔認証は英語で"face recognition"または"facial recognition"と呼ばれます。これらを日本語訳すると顔認識となりますね。顔認証と顔認識、いったいどちらが正しいのかとよく話題になるのですが…正解は実はありません。生体認証に関する日本工業規格であるJIS X 8101ですら、その文章の中で顔認証と顔認識の両方が出てきます。なので、顔認証・顔認識はどちらの呼び方でもOKでしょう。

 顔で生体認証する技術を顔認証・顔認識と呼ぶことはどちらでもOKですが、では、デジカメのオートフォーカス機能やセルフィーの美顔加工はどうでしょうか。認証という言葉の持つ意味が『個人の証明や確認』である以上、それ以外の意味で利用するのは適切ではないでしょう。

まとめ

 本記事のまとめは以下の通りです。

・人間の個人差を利用して個人認証する方法を生体認証と呼ぶ
・生体認証は忘却・紛失しないが、計測機器が必要で認証失敗のリスクがある
・生体認証のうち、顔を使ったものを顔認証/顔認識と呼ぶ

*1:個体差とも

*2:JISでは、バイオメトリック個人認証と定められています