顔認証入門 #3 1:1認証・1:N認証

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 前回に引き続き、今回も顔認証の用語について解説していきます。顔認証に限らず、生体認証には2通りの利用形態があります。今回は、『1:1認証』『1:N認証』について説明していきます。これらは物理認証や知識認証にはない、生体認証特有の概念です。とても重要ですので知っておくとよいでしょう。

1:1認証

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入出国審査は1:1認証の代表例です

 1:1認証は、2つの顔写真が同一人物か否かを判定する認証方式です。英語では、顔認証の1:1認証方式のことを"face verification"と呼びます。入出国審査でパスポートとその提示者が同一人物かチェックする、といったシーンで行われるのが1:1認証です。

 入出国審査の例で具体的に説明しましょう。今のパスポートにはICが組み込まれていて、その中に顔画像データが登録されています。入出国審査では、パスポートに登録されている顔画像と、その提示者が同一人物かどうかを顔認証システムが判定します。このとき、提示者以外の顔画像は利用されませんし、別のパスポートに登録されていた顔画像も利用しません。入力側が1枚で、登録側も1枚なので、1:1認証と呼ばれています。

1:N認証

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犯罪捜査は1:N認証の代表例です

 1:N認証は、ある顔写真が登録済の複数の人物の中から誰かを特定する認証方式です。英語では、顔認証の1:N認証方式のことを"face identification"と呼びます。犯罪捜査で監視カメラに映った犯人を犯罪者データベースの中から特定する、といったシーンで行われるのが1:N認証です。

 犯罪捜査の例で具体的に説明しましょう。ある犯罪が発生して、監視カメラから犯人と思しき顔画像が得られたとします。いきなり全国民の中から探し出すのは無茶なので、再犯のケースを考慮して、同様の犯罪歴のあるN名の犯罪者データベースから特定を試みます。このとき、特定したい人物の顔画像は単数ですが、事前に登録されている人物は複数、という状況になります。入力側が1枚で、登録側がN枚なので、1:N認証と呼ばれています。

1:1認証と1:N認証の違い

 すごく簡単にいうと、1:N認証は1:1認証をN回連続正解しなければなりません。したがって、1:1認証より1:N認証のほうが困難なタスク設定であるといえます。これは認証失敗のリスクがある生体認証特有の現象で、物理認証や知識認証では考慮する必要がありません。

 (参考)ある会社の入場ゲートに、顔認証を導入することを考えましょう。社員証を利用するのに加えて、顔認証も併用して利用する入場ゲートは、1:1認証の方式となります。この場合、社員証を拾得した人物がそれを使って不法侵入する等のリスクを減らせるので、セキュリティを高めることができます。一方で、社員証を廃止し、顔認証のみで個人認証する入場ゲートは、1:N認証の方式となります。この場合、社員証が不要となるので利便性が向上しますが、セキュリティが高くなるわけではありません。

まとめ

 本記事のまとめは以下の通りです。今回もおつかれさまでした。

・生体認証には、1:1認証と1:N認証の2種類の認証方式がある
・基本的に、1:1認証より1:N認証のほうが困難
・適切な認証方法を選ぶことが重要